数百年の歴史を持つ蔵元も多い日本酒業界。実は、地域に根ざし、自然の恵みを生かしてきたその営み自体が、サステナビリティの先駆けともいえます。本記事では、記事49でご紹介した個々の商品のオーガニックな取り組みとは少し異なる視点から、蔵元・業界単位で進むSDGsへの取り組み事例をご紹介します。
再生可能エネルギーへの転換
兵庫県神戸市の神戸酒心館は、醸造工程で使用する全電力を再生可能エネルギーに切り替え、ボイラーの燃料もカーボンニュートラルな都市ガスへ転換することで、日本酒製造におけるCO2排出量の実質ゼロを実現したとされています。福島県の大和川酒造店も、東日本大震災の経験から、米・水・エネルギーの100%自給を目指す取り組みを進めています。
資源循環型のプロジェクト
兵庫県では、食品残渣などの有機ごみを発酵させて得たバイオガスの副産物(消化液)を肥料として山田錦を育て、「地エネの酒 環(めぐる)」という資源循環型の生酛純米酒を醸す「地エネの酒 for SDGsプロジェクト」が進められています。大関・櫻正宗・福寿など、複数の蔵元が参加しています。
容器・パッケージの工夫
瓶商品の軽量化は、輸送時のCO2排出量削減につながる取り組みとして、多くの蔵元で進められています。また、日本酒の一升瓶は、回収・洗浄して再使用される「リターナブル瓶」としての側面も持ち、サステナビリティの観点から見直されています。
地域社会との共生
石川県能登町の数馬酒造は、能登の契約農家とともに酒米を100%能登産で調達し、耕作放棄地を活用した水田づくりから酒造りに取り組んでいます。令和6年能登半島地震では蔵にも被害を受けましたが、地域とともに復興を歩みながら酒造りを続けています。
酒粕の有効活用(記事84との関連)
記事84でご紹介した酒粕の活用は、サステナビリティの観点からも注目されています。通常は廃棄されることもある酒粕を原料にしたクラフトジンが、世界的なコンテストで評価を受けるなど、新たな価値創出の事例も生まれています。
海外輸出とサステナビリティの関係(記事39との関連)
記事39でご紹介した海外輸出の拡大に伴い、欧州をはじめとする海外市場では、サステナビリティへの取り組みが取引の重要な要素になりつつあるとされています。海外のワイナリーの取り組みを参考に、サステナビリティを経営の柱に据える蔵元も増えています。
サステナビリティに取り組む蔵元の日本酒10選
環境・地域社会への取り組みで知られる蔵元の代表銘柄を10点ご紹介します。価格帯は720mlサイズを基準とした目安です。
| 商品名 | 蔵元・産地 | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|---|
| 福寿 純米酒 エコゼロ | 神戸酒心館/兵庫県神戸市 | 醸造工程の電力を再生可能エネルギーに切り替え、世界初とされるCO2排出量実質ゼロを実現した先進的な一本。 | 2,500〜4,500円 |
| 福寿 特別純米 コウノトリを育むお米 | 神戸酒心館/兵庫県神戸市 | コウノトリが住みやすい環境づくりの米で仕込む、生物多様性に配慮した一本。 | 2,800〜4,500円 |
| 大関 地エネの酒 環(めぐる) | 大関/兵庫県西宮市 | 食品残渣由来のバイオガス副産物を肥料に育てた酒米で醸す、資源循環型の純米吟醸酒。 | 2,500〜4,500円 |
| 櫻正宗 地エネの酒 環(めぐる) | 櫻正宗/兵庫県神戸市 | 灘の老舗蔵による資源循環プロジェクト参加銘柄。地域連携によるサステナブルな酒造り。 | 2,500〜4,500円 |
| 弥右衛門 純米酒 | 大和川酒造店/福島県喜多方市 | 米・水・エネルギーの100%自給を目指す、東日本大震災を機に再エネに取り組む蔵元。 | 2,200〜4,000円 |
| 竹葉 能登純米 | 数馬酒造/石川県能登町 | 能登産米・能登の仕込み水にこだわり、耕作放棄地を活用した水田づくりから取り組む地酒。 | 2,500〜4,500円 |
| 菊正宗 上撰 | 菊正宗酒造/兵庫県(灘) | 灘五郷酒造組合による水質保全活動など、地域一体となった環境への取り組みに参加。 | 1,500〜2,500円 |
| 白鶴 まる | 白鶴酒造/兵庫県(灘) | 瓶商品の軽量化や、農業活動支援など、SDGs17目標に沿った幅広い取り組みを展開。 | 1,500〜2,500円 |
| 軽量瓶仕様の純米酒 各蔵元 | 各蔵元 | 輸送時のCO2削減を目的とした軽量瓶を採用する商品。サステナビリティの身近な実践例。 | 2,000〜4,000円 |
| 酒粕由来クラフトジン 各メーカー | 各メーカー | 通常は廃棄されることもある酒粕を原料に活用したクラフトジン。日本酒由来のサステナブル商品。 | 4,000〜7,000円 |
よくある質問
Qサステナブルな取り組みをしている日本酒は、味も特別なのですか?
必ずしもそうとは限りません。製法や原料は通常の日本酒と変わらない場合も多く、あくまで製造・流通過程での取り組みが特徴です。
Q『地エネの酒』はどこで購入できますか?
参加蔵元の直売所やECサイトで取り扱いがある場合があります。詳しくは各蔵元・プロジェクトの公式サイトで確認してください。
Q個人でも日本酒業界のサステナビリティに貢献できることはありますか?
一升瓶のリターナブル利用に協力する、酒粕を活用したレシピを取り入れるなど、身近にできることもあります。記事84もぜひ参考にしてください。
Qサステナビリティへの取り組みは、すべての蔵元で進んでいますか?
取り組みの状況は蔵元によって様々です。先進的な事例がある一方、規模や地域によって進捗には差があるとされています。
Q記事49(オーガニック)との違いは何ですか?
記事49は個々の商品の原料(自然栽培米など)に焦点を当てていますが、本記事は蔵元・業界全体の取り組み(再エネ・資源循環・地域連携など)を紹介しています。
まとめ
日本酒業界では、再生可能エネルギーの活用や資源循環、地域社会との共生など、様々な形でサステナビリティへの取り組みが進んでいます。記事39・49・84と合わせて、こうした蔵元の姿勢を知ることも、日本酒を選ぶ際の新しい視点になるかもしれません。
お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中・授乳中の飲酒はお控えください。
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